2004年5月1日以降のユーロ圏拡大

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2004年5月1日に、新規10か国が欧州連合に加盟しました。2007年1月1日には、さらに2か国(ブルガリア・ルーマニア)が加盟しました。これらの国々は、直ちに単一通貨を導入したわけではありません。新規加盟国は、まずは、ユーロを採用して「収斂基準」を充たす用意があることを示さなければなりません。この要件が充たされ次第、新規加盟国にはユーロの導入が義務付けられることになります。2007年1月、スロヴェニアは、2004年の「拡大の波」の諸国のうち、ユーロを導入した最初の国になりました。2008年1月1日には、キプロスとマルタがこれに追従し、EU全27加盟国のうち、ユーロ圏諸国は13か国から15か国へと拡大します。

法令等

理事会、欧州議会、欧州経済社会委員会、地域委員会および欧州中央銀行に対する欧州委員会告示:将来のユーロ圏拡大の実務的準備に関する第一次報告書(欧州委員会2004年748号最終版、官報未登載)。

概要

ユーロの導入には、細心の実務的準備が必要となります。欧州委員会は、定期的にユーロ導入準備の状態に関する報告を行っています。この告示は、すべての利害関係者(共同体機関、加盟国、一般大衆、メディア等)に情報提供を行う目的の第一次報告書です。この報告書は、情報提供の目的だけのために公表されるもので、法的な価値はありません。この報告書は、収斂報告書と混同されてはなりません。

2007年以降のユーロ採用計画

加盟国がユーロを採用できるようになるためには、少なくとも2年間、欧州為替相場メカニズム(ERM-II)により定められる変動幅について、通貨の切り下げなく、通常の変動幅が観察されなければなりません。2004年6月28日には、3つの加盟国(エストニア、リトアニア、スロヴェニア)がERM-IIに参加し、可能な限り早期(2007年)にユーロを採用することを希望しました。2005年5月2日にERM-IIに加入したキプロス(pdf)、ラトヴィア(pdf)、マルタ(pdf)も同じです。

欧州共同体条約によれば、欧州委員会の提案に基づいて、理事会が、どの加盟国がユーロ採用の要件を充たしているかを決定し、その加盟国がユーロ圏に加入する期日を定めます。ユーロ採用の期日に、切替レートが発効し、国内通貨が存在しなくなり、金融政策の管轄が欧州中央銀行に移管されます。

ユーロ導入の準備

ユーロ導入は、前もってよく準備する必要があります。実務上・ロジスティックス上の理由で、ユーロ圏第一陣の諸国は、通貨としてのユーロの採用からユーロ紙幣・硬貨の流通までの間に、3年間の移行期間を設けることにしました。しかし、新規加盟国はユーロというものを既によく知っていることもありますので、ユーロ圏への加入とユーロ紙幣・硬貨の導入が同時に起こる「ビッグバン」シナリオも有益でしょう。ユーロ硬貨のデザインのコンテストのような公式プロジェクトが、すべての新規加盟国において具現化されつつあります。

過去の切替から得られた教訓

欧州委員会は、「いくつかの点で改善の余地はあったものの、第一陣のユーロへの切替は成功だった」としています。 それゆえ、新通貨への迅速な切替や新通貨に対する国民の支持を確実なものとするためには、早期からの徹底した準備が必要であるということになります。欧州委員会は、3年間の移行期間は長過ぎたとの見解をとっており、すべての関係当事者の利益のためには、ユーロ紙幣・硬貨が迅速に導入されることを希望しています。欧州委員会は、二重流通期間〔旧通貨と新通貨がともに流通する期間〕は短いほうがよいと考えています。

欧州委員会が強調するのは、国内当局が価格に対するいかなる影響(例えば、商店主・小売業者による不正確な価格切替によるもの)をも回避する対策を講じなければならないということです。消費者団体の活潑な関与は、望ましいといえます。信頼を確保し、消費者が圧力をかける手段を持つことを可能とするために、当局は、小売業者に対して、正確な価格切替を行うという約束を公に表示するよう要求することもできるでしょう。

東欧へのユーロ圏の拡大は、いくつかの連続の波として起こる予定で、第一陣のときのような集合的なモメントが生じることはないでしょう。欧州委員会は、新規加盟国においては、国内通貨からユーロへの切替は、はるかに速くなると考えています。その主たる理由は、多くの国々が「ビッグバン」アプローチ(ユーロ圏への加入日とユーロ現金の公式導入日が一致するアプローチ)を考慮していることです。

関連法令等

理事会、欧州議会、欧州経済社会委員会、地域委員会および欧州中央銀行に対する2007年7月16日の欧州委員会告示:将来のユーロ圏拡大の実務的準備に関する第五次報告書(欧州委員会2007年434号最終版、官報未登載)

欧州委員会は、マルタとキプロスで進行中の準備に注目しています。両国は、2008年1月1日にユーロを導入する予定です。この2つの地中海島嶼国は、ユーロが当該加盟国の通貨として採用されると同時にユーロ紙幣・硬貨は同時に導入される「ビッグバン」シナリオを選びました。この報告書は、2009年1月1日に単一通貨を採択することを希望しているスロヴァキアの準備作業も分析しています。

欧州委員会は、キプロスがその準備作業を継続すべきであるとしています。キプロスは、「公正価格規範」(Fair Pricing Code)の実施にも特別な注意を払うべきです。「公正価格規範」においては、事業者や小売業者は、切替を公正に実行するとともに、切替から利益を得ようとしないと約束しています。参加する事業者のリストは公表される予定で、また、参加事業者は「公正価格規範」のロゴを使用することができます。さらに、10キプロスポンド(CYP)相当のミニキット25万個が、2007年12月3日から、一般大衆に入手可能となる予定です。同日に、事業者は、最初の数日間の取引のために、172ユーロ相当のスターターキットを入手することができます。公開入札の結果、キプロスのユーロ硬貨の製造は、フィンランド造幣局が行うことになります。

マルタのユーロ準備は、非常に高度な段階にあります。また、ユーロに関する広報活動は非常に包括的で質の良いものです。2007年7月10日以降、ユーロとマルタ・リラの両方で価格を表示することが義務付けられています。さらに、FAIR(小売公正価格協定)イニシアティヴは、消費者保護に役立っています。これは、FAIRに署名する事業者は、通貨切替による値上げをしないと約束するものです。このイニシアティヴは、価格モニタリングや侵害の主張の調査のような他の措置と連携したものです。12月1日に、小売業者は131ユーロ相当のスターターキットを入手することができますが、一般大衆は、2007年12月10日まで11.65ユーロ相当のミニキットを待つことになります。マルタは国内造幣局を有しないため、公開入札の結果、マルタのユーロの製造はパリ造幣局によって行われることになります。

スロヴァキアは、上記の「ビッグバン」シナリオにより、2009年1月1日からユーロを導入したいとしています。ユーロへの切替のための国内計画はかなり完全なものですが、欧州委員会は、広報戦略等のいくつかの側面については、さらに明確化させていかなければならないと感じています。

  • ユーロ導入の実務的準備の水準(2007年6月):表(pdf

理事会、欧州議会、欧州経済社会委員会、地域委員会および欧州中央銀行に対する2006年11月10日の欧州委員会告示:将来のユーロ圏拡大の実務的準備に関する第四次報告書(欧州委員会2006年671号最終版、官報未登載)

この報告書は、スロヴェニアが2007年1月1日にユーロ圏に加入するという前提で、スロヴェニアで行なわれている実務的準備に注目しています。欧州委員会は、準備の進行は良好であるとしています。但し、価格表示の公平性・安定性に対する消費者の信頼感を強化するために、補充的措置が必要です。

この報告書は、次に、2008年1月1日のユーロ導入を希望しているキプロスとマルタの準備に注目しています。両国は、特に観光地の小売取引においてユーロを使用することがよくあり、ユーロ導入国内切替計画を採択したところです。

欧州委員会の見解によれば、キプロスの切替計画は、切替の実務的側面の大部分をカヴァーしていますが、消費者の信頼感を促進するために補充的措置が必要です。さらに、切替計画は、国内通貨の回収や二重価格表示等のオーガニゼーション等の特定の側面に関しては、もっと詳述されるべきです。マルタの国内切替計画に関しては、欧州委員会は、ユーロ導入に関する主要な点を詳細に論じていると考えます。もっとも、いくつかの点(例えば、スターターキットの内容、ATMの迅速な更新)については、もっと詳細にわたって論じるべきです。

その他の加盟国(チェコ共和国、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、スロヴァキア、ハンガリー、ポーランド、スウェーデン)の準備に関しては、欧州委員会は、2006年6月の前回の報告書の公表以来、重要な発展はなかったと考えています。

理事会、欧州議会、欧州経済社会委員会、地域委員会および欧州中央銀行に対する2006年6月22日の欧州委員会告示:将来のユーロ圏拡大の実務的準備に関する第三次報告書(欧州委員会2006年322号最終版、官報未登載)

この報告書は、2007年1月1日にユーロ導入予定のスロヴェニアで進行している実務的準備に集中しています。欧州委員会の見解によれば、準備はよく進捗しているものの、消費者の信頼感を増加させる補充的措置が必要です。

欧州委員会は、2008年のユーロ導入を希望している加盟国(特にキプロス・マルタ)においては、準備を増強する必要があると考えています。大多数のユーロの導入国内切替計画は、いくつかの分野(特に、切替期間における価格上昇を防止する小売業者・消費者間の協定に関する分野)において増強の必要があります。

理事会、欧州議会、欧州経済社会委員会、地域委員会および欧州中央銀行に対する2005年11月4日の欧州委員会告示:将来のユーロ圏拡大の実務的準備に関する第二次報告書(欧州委員会2005年545号最終版、官報未登載)

この報告書は、2004年5月1日に欧州連合に加盟した加盟国におけるユーロ導入の準備を評価するものです。この報告書は、加盟国がユーロの採用について自ら設定した目標期日を示しています:

  • エストニア、リトアニア、スロヴェニア:2007年1月1日
  • キプロス、ラトヴィア、マルタ:遅くとも2008年1月1日
  • スロヴァキア:2009年1月1日
  • チェコ共和国、ハンガリー:2010年

加盟国は、法定支払手段としてのユーロの導入について、その採用日における「ビッグバン」アプローチを好んでいます。ユーロ通貨と国内通貨の二重流通期間は、きわめて短いもの(概して2週間)となる予定です。

この報告書は、加盟国の準備の状態を要約していますが、国によってかなりさまざまなものとなっています。スロヴェニアとスロヴァキアの進捗状況は良好です。エストニアとリトアニアは、準備をスピードアップ必要があります。キプロス、ラトヴィア、マルタにおける状況は懸念の対象です。すなわち、準備はまだ予備的な段階にあり、公共部門・民間部門におけるすべての関係者に現状を適時に知らせることによって、準備をスピードアップする必要があります。欧州委員会は、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランドにおける実務的準備についても、予備的段階にあるとしています。

欧州委員会の見解によれば、加盟国は、徹底的な広報戦略を採るべきです。新規加盟国においてはユーロに対する満足感が低水準にあるにもかかわらず、広報戦略を採択したのはそのうち3か国だけです(エストニア、リトアニア、スロヴェニア)。

さらに詳しい情報については、以下のウェブサイトを参照してください:

原文最終更新:2007年7月27日
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