共同付加価値税制(付加価値税指令)

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この指令により、「共同付加価値税制」の導入に関する規定が一本の法典にまとめられます。共同付加価値税制は、物の製造・販売とサーヴィス(役務)の提供のうち、欧州共同体において消費目的で取得・譲渡されるものを対象としています。行われた売上の数に関係なく、租税上の中立性(steuerliche Neutralität)を保障するため、付加価値税の納税義務者は、他の付加価値税納税義務者に支払った付加価値税額を、自らの付加価値税勘定から控除することができます〔いわゆる「仕入税額控除」〕。付加価値税は、結局のところ、物またはサーヴィスの最終価格に百分率で上乗せされるかたちで、最終消費者に転嫁されることになります。

法令

共同付加価値税制に関する2006年11月28日の理事会指令欧州共同体2006年112号改正法令も参照のこと)

概要

付加価値税は、物・サーヴィスの製造・販売を行う事業活動から徴収される一般消費税です。欧州共同体の共同付加価値税制の導入に関する法規定は、この付加価値税指令により法典化されます。

共同付加価値税制は、欧州共同体において消費目的で取得・譲渡された物とサーヴィスに適用されます。付加価値税は、製造・販売の連鎖のうちの一つの段階において物・サーヴィスに発生した付加価値に従って課税されます。

付加価値税は、「部分支払制度」(Teilzahlungssystem)に従って、部分ごとに課税されます。部分支払制度〔≒仕入税額控除法〕により、付加価値税の納税義務者(付加価値税納税義務のある企業)は、自らの付加価値税勘定から、〔取引連鎖の〕前段階において、自らの事業に用いる取得物につき、他の納税義務者に対して支払った付加価値税額を控除することができます。この制度により、租税上の中立性(いくつの個別段階を経たかに関係ないこと)が保障されます。

結局のところ、付加価値税は、物・サーヴィスの末端価格に百分率で上乗せされるかたちで、末端の消費者に転嫁されます。この末端価格は、製造・販売の個別段階において加えられてきた付加価値の合計額を表していることになります。物の譲渡人やサーヴィス提供者(付加価値税納税義務者)は、物またはサーヴィスに支払われた付加価値税を、自らの仕入先に支払った付加価値税を控除した後、国内の税務行政当局に支払います。

適用範囲

付加価値税が課税されるのは、加盟国の領土において納税義務者が納税義務者として対価を受けて行った売上です。そのほか、物の輸入についても、付加価値税が課税されます。

課税対象となる売上は、以下のものを含みます:

  • 納税義務者が物を譲渡すること。
  • ある加盟国からもちこまれた物を他の加盟国において取得すること(共同体内の取得)。
  • 納税義務者がサーヴィスを提供すること。
  • 欧州共同体外(「第三地域」*または第三国)を原産地とする物の輸入。

「共同体内の物の取得」とされるのは、物が一つの加盟国から別の加盟国に輸送された場合です。発送地である加盟国の納税義務者が引き渡した物が、到着地である別の加盟国において、納税義務者または納税義務のない法人により引き取られた場合には、「共同体内の物の取得」があったことになります。「新規乗物」*や「個別消費税の課税対象品目」*を他人が取得する場合であっても、「共同体内の物の取得」は起こります。

付加価値税納税義務のない者や納税を免除された特定の納税義務者による「共同体内の物の取得」が、1年あたり1万ユーロの最低基準額を上回らない場合には、取得者が付加価値税の確定申告を行わない限り、この取得は付加価値税の課税対象となりません。

中古品・芸術品・収集品・骨董品の共同体内の取得については、売り手が付加価値税納税義務のある再販売業者(ディーラー)または公の競売(オークション)の開催者であり、これらの者が当該物品について、差額(マージン)の課税に関する特則を利用して租税を支払った場合には、付加価値税の課税対象とはなりません。

場所的適用範囲

以下の地域においては、付加価値税が適用されません:

  • ヘルゴラント島(Insel Helgoland)〔ドイツ〕、ビュージンゲン地域(Gebiet von Büsingen)〔ドイツ〕、セウタ(Ceuta)〔スペイン〕、メリリャ(Melilla)〔スペイン〕、リヴィーニョ(Livigno)〔イタリア〕、カンピョーネ・ディターリア(Campione d'Italia)〔イタリア〕、ルガーノ湖のイタリア領帰属地域(共同体関税地域の構成部分となっていない地域)。
  • アトス山〔ギリシャ〕、カナリア諸島〔スペイン〕、フランス海外領土、オーランド諸島〔フィンランド〕、チャンネル諸島〔英王領殖民地〕(共同体関税地域の構成部分となっていない地域)。

〔欧州共同体〕条約の規定により、ジブラルタルやキプロス共和国の統治支配下にないキプロスの部分〔トルコ系住民地域〕についても、付加価値税は適用されません。これらの地域は、「第三地域」として扱われます。

モナコ公国、マン島〔英王属領〕、連合王国領アクロティリ(Akrotiri)・デケリア(Dhekelia)については、第三国とはみなされません。すなわち、付加価値税が課税されます。

納税義務者

「納税義務者」となるのは、任意の場所において任意の目的・結果のために独立して「自営としての」経済活動を行う者です。「経済活動」とは、生産者・商人・サーヴィス提供者のすべての活動をいい、鉱業・農業・自由業・みなし自由業を含みます。賃金を受け取る活動は、その者が雇用契約またはその他の服従関係を創設する法律関係により雇用者の支配下に置かれている限り、自営としての活動ではありません。

その他の者であっても、他の加盟国に仕向けられた「新規乗物」の譲渡を反復して行う場合には、同じく納税義務者とみなされます。

加盟国は、反復して経済活動に分類される活動を行う者(とりわけ、建物・建物の一部・建物に属する土地を譲渡する者で、建物等が新築である場合、または、更地を譲渡する場合)を、納税義務者とみなすことができます。

国・州・市町村その他の公法上の団体は、公権力の行使として義務的に活動・売上を行う場合には、納税義務者とはみなされません。但し、これらの団体が非納税義務者として行為してしまうと甚大な競争阻害が惹き起こされる場合には、この限りでありません。また、これらの団体が特定の事業活動を行う場合には、納税義務者とみなされます。

課税対象となる売上

「物の譲渡」とは、所有者が有体物に対して有する権限を移転することをいいます。

「サーヴィス(役務)の提供」とは、「物の譲渡」に該当しないすべての売上をいいます。

「共同体内の物の取得」とは、所有者が動産に対して有する権限を獲得し、その動産がある加盟国から他の加盟国の譲受人に向けて送付・輸送されることをいいます。

「物の輸入」とは、〔共同体内の〕自由取引下にない物を共同体内に引き取ることをいいます。第三国を原産地とする物が〔共同体内の〕自由取引下にある場合でも、その物を引き取る場合には、同じく輸入とみなされます。

課税対象となる売上の場所

物の譲渡地となるのは、以下の場所です:

  • 譲渡の時点における物の所在地(物が送付・輸送されなかった場合)
  • 発送の時点における譲受人の所在地(物が送付・輸送される場合)
  • 人員輸送手段の出発地(船上・航空機内・鉄道内で販売する場合)
  • 譲受人の所在地(天然ガス分配網により供給されるガスの供給、電気の供給)

「共同体内の物の取得」地となるのは、物が送付・輸送されて譲受人に到着した時点の物の所在地です。

サーヴィスの提供地となるのは、サーヴィス提供者が経済活動の本拠または固定的な営業所(その本拠または営業所からサーヴィスが提供される場合)を有する地です。そのような本拠や固定的な営業所がない場合には、サーヴィス提供者の住所または常居所がサーヴィス提供地となります。

但し、これらの基本原則にはさまざまな例外があります。とくに、土地に関するサーヴィス、文化・芸術・スポーツ・学問・授業・娯楽の分野におけるサーヴィス、相談人・エンジニア・弁護士・会計士のサーヴィスについては例外があります。これらの例外の最も重要な目的は、給付が実際に利用・消費された場所において課税を行うことです。

第三国との関係においては、加盟国は、二重課税・租税回避・競争阻害を防止するため、

  • 当該サーヴィスの利用が実際には共同体外において行われる場合に、自国の領土内にあるサーヴィス提供地を、共同体外にあるものとみなすことができます。
  • 当該サーヴィスの利用が実際には加盟国において行われる場合に、共同体外にあるサーヴィス提供地を、自国の領土内にあるものとみなすことができます。

物の輸入の場所については、その物が共同体内に引き取られた時点においてその物の所在地が領土となっている加盟国となります。

課税要件・課税請求権

課税要件*の基準時となり、課税請求権*の発生時となるのは、物の譲渡ないしサーヴィスの提供が行われた時点です。例外となるのは、以下に掲げる特定の場合のみです。

「共同体内の物の取得」については、当該「共同体内の取得」が行われた時点が課税要件の基準時となります。課税請求権については、当該取得が行われた翌月の15日に発生します。この日より前にインボイスが発行される場合には、インボイス発行の日が課税請求権の発生時となります。

物の輸入については、欧州共同体加盟国において当該物の輸入が行われた時点が課税要件の基準時となるとともに、課税請求権の発生時となります。

課税標準

共同体内の物の譲渡・取得やサーヴィスの提供の場合、譲渡人・提供者が当該売上について譲受人から受ける対価を構成するすべてのもの(当該売上価格と直接的な関係にある助成金を含みます)が課税標準となります。譲渡人・提供者が譲受人・受領者に対して請求する租税・関税・手数料・公課(付加価値税自体を除く)や諸掛(しょがかり)についても、課税標準に含まれます。値引額・返金額や買い手が立て替えた費用の額については、課税標準に含まれません。

物の輸入の場合には、関税の課税標準となるべき価格が課税標準となります。輸入加盟国以外で課された租税・関税・手数料その他の公課や、輸入に基づいて課された租税(付加価値税を除く)、その他の諸掛(包装費・運賃等)については、課税標準に含まれます。

付加価値税率

課税対象となる売上に対しては、課税要件が充たされた時点の、課税要件が充たされた加盟国における税率が適用されます。標準付加価値税率は、課税標準の百分率により定められています。この百分率は、2010年12月31日までは、15パーセントを下回ってはなりません。

加盟国は、一種類または二種類の優遇税率を導入することができます。この優遇税率は、5パーセントを下回ってはなりません。優遇税率は、別表第三に掲げられた範疇(カテゴリー)の物の譲渡・サーヴィスの提供についてのみ適用することができます。

但し、加盟国は、天然ガス・電気・〔セントラルヒーティング等に使用する〕熱源(Fernwärme)については、特定の条件の下で優遇税率を適用することができます。

2006年3月31日より前にしかるべき申請を行ったいくつかの加盟国については、理事会より許可が与えられ、2010年12月31日までは、最終消費者に提供されるローカルな性格を有する特定の労働集中型サーヴィス(arbeitsintensive Dienstleistungen)に対して優遇税率を適用することができます。

いくつかの加盟国は、例外の許可によって、特定の分野において優遇税率・特別優遇税率を維持したり、税率を零パーセント(非課税)にする権限を与えられました。

付加価値税の免除

付加価値税を免除された物・サーヴィスには、最終消費者への販売の際に、付加価値税が課せられません。しかし、物の譲渡・サーヴィスの提供が付加価値税から免除されているわけですから、売り手も、自らが仕入にあたって支払った付加価値税を控除することができないことになります。このような「前段階税額控除権のない付加価値税免除」においては、消費者の支払う価格には「隠れた」付加価値税が含まれていることになります〔売り手が、仕入税額を控除できないので、事実上価格に転嫁することになるため〕。したがって、この種の付加価値税免除は、いくつかの加盟国において維持された「付加価値税零パーセント」とは区別すべきものです。後者においては、消費者の支払う最終価格にはまったく残りの付加価値税が含まれません〔売り手も仕入の際に付加価値税を支払う必要がないため〕。

これに対し、「前段階税額控除権限ある付加価値税免除」というものもあり、その主たる目的は、物・サーヴィスが消費・課税されたとみなされる場所を考慮することにあります。すなわち、これらの売上については仕向地国において課税されるため、付加価値税は原産地国においては免税となるということです。

前段階税額控除権のない付加価値税免除

以下の活動については、社会経済的な理由により、付加価値税が免除されます:

  • 特定の公益活動(例えば、医療行為、社会福祉事業に関連する物やサーヴィス、学校や高等教育機関の授業、特定の文化的サーヴィス)
  • 特定の売上(とりわけ、保険、信用貸付、特定の銀行サーヴィス、切手の販売、富くじ・賭博、特定の不動産譲渡を含みます)

物品の流通を容易にするため、欧州共同体外の領域からの特定の輸入については、付加価値税が免除されます。これに該当するのは、例えば、ある物を終局的に〔=中継等ではなく〕輸入する場合で、当該物の販売が当該輸入加盟国において付加価値税免除とされているような場合です。その他、これに該当するものには、欧州経済共同体指令1969年169号が輸入について規定している物(旅行者手荷物)、欧州経済共同体指令1983年181号が輸入について規定している物(非商業的目的により輸入される物)、欧州共同体指令2006年79号が輸入について規定している物(商業的な性質を有しない小型送付により送付される物)があります。

前段階税額控除権のある付加価値税免除

以下の売上については、物・サーヴィスの消費・課税地とみなされる場所を考慮するために、付加価値税が免除されます:

  • 「共同体内の物の譲渡」。これには、一つの加盟国から他の加盟国に送付される「新規乗物」や「個別消費税の課税対象物品」も含まれます。
  • 欧州共同体から「第三地域」・第三国への物の輸出。
  • 国際輸送に関連する特定の売上、輸出と同等の性質を有する売上。
  • 仲立人が輸出に分類される行為に参加した場合の仲立人のサーヴィス。
  • 越境的な物品取引の売上のうち特定のもの(例えば、保税倉庫その他の倉庫に関連するもの)。

前段階税額控除

付加価値税納税義務者が物・サーヴィスを取得した場合には、当該納税義務者が経済活動を行った加盟国における付加価値税額を控除する権利があります。但し、当該物・サーヴィスを、自らの業務活動のために使用する限りにおいてです。納税義務者が、住所ないし営業上の本拠地を有しない加盟国において付加価値税を支払った場合には、特別手続により還付を受けることができます。なお、付加価値税を免除された経済活動を営む場合や、特定の特則(例えば、小企業に対する付加価値税免除)が適用されている場合には、前段階税額控除の権限もありません。

特定の場合においては、前段階税額控除が限定ないし修正されることがあります。前段階税額控除を行えるためには、特定の条件(例えば、インボイスが存在していること)が充たされなければなりません。

納税義務者の義務、特定の非納税義務者の義務

付加価値税債務の債務者となるのは、以下の人々です:

  • 課税対象となる物の譲渡・サーヴィスの提供を行った納税義務者。但し、他人が租税債務者となる場合(例えば、「リヴァース・チャージ手続」により顧客側が租税債務者となる場合)を除く。
  • 課税対象となる物の「共同体内の譲渡」の譲受人。
  • 輸入の場合には、輸入加盟国が租税債務者として規定・認定する者。

納税義務者は、納税義務者としての活動を変更・終了する場合には、それを届け出る必要があります。また、納税義務者には、十分詳細な記録を行うことが義務付けられています。

納税義務者は、他の納税義務者・納税義務のない法人に対して行う物の譲渡・サーヴィスの提供について、十分詳細なインボイスを発行することを保証しなければなりません。その他の特定の場合にも、インボイスを発行しなければなりません。

例外

加盟国は、付加価値税の徴収を簡素化するため、または、特定の租税詐欺や脱税を防止するための例外手続を導入する許可を、特定の条件の下で得ることができます。

特則

以下の分野においては、付加価値税の特則があります:

  • 小企業。
  • 農業生産者(共同概算規定)。
  • 中古品、芸術品、収集品、骨董品。
  • 投資用の金地金。
  • 旅行業者。
  • 電子的に提供されたサーヴィス。

消費者

特定の付加価値税規定は、事業者だけでなく個人・消費者をも対象としています。例えば、個人が他の加盟国において物を取得した場合が、これに該ります。当該物が消費者により住所地に移動された場合には、付加価値税は、当該物が譲渡された(すなわち「源泉」の)加盟国において、付加価値税が支払われることになります。付加価値税を免除された特定の納税義務者や、付加価値税を免除された法人についても、特定の数量については、他の加盟国において〔付加価値税を支払って〕物を取得する権利があります。このことは、加盟国間の物品流通に関する現行規定から導き出されます。上記の人々に適用されるルールは、「譲渡された物・提供されたサーヴィスの源泉加盟国における課税の原則」に基づくものです(「概要」末尾を参照のこと)。

但し、この「源泉地主義」は、遠隔地取引により販売された物(すなわち、売り手と買い手が物の発送の時点で異なる加盟国にいる場合)には適用されません。当該物の価額が特定の基準値(加盟国により3万5000ユーロないし10万ユーロ)を上回る場合には、譲渡人は、「仕向地国主義」を適用しなければなりません。また、個別消費税の課税品目の遠隔地取引については、原則として、譲渡人は「仕向地国主義」を適用しなければなりません。「仕向地国主義」によれば、譲渡人はインボイスにおいて、仕向地国における付加価値税を、仕向地国に適用されている税率で請求しなければなりません。

他の加盟国において「新規乗物」を取得する場合には、「源泉地主義」は適用されません。この場合には、仕向地国において取得者により付加価値税が支払われます。

背景

この「付加価値税指令」は、制定以来30回以上の改正を経てきた「共同付加価値税制及び統一的課税標準に関する欧州経済共同体第六指令1977年388号」を大改正するものです。この大改正により、「欧州経済共同体指令1977年388号」は、現行の規定に〔内容的な〕変更を加えることなく、2007年1月1日をもって、これまでの改正を織り込んだ単行法令にまとめられます。

「現行の付加価値税についての経過規定は、加盟国間の通商取引の課税についての終局的な規定(原則として、譲渡された物・提供されたサーヴィスの源泉国において課税するもの)に置き換えられるべきである」ということについては、この「付加価値税指令」が疑いを差し挟むことはありません。ただ、そのような規定の導入によって、満足の行くような法的枠組が整えられるまでは、付加価値税についての過渡的な制度下において、さまざまな税制が維持されなければなりません(但し、国境での検査は維持されてはなりません)。長期的な目的は、物の売り手が付加価値税を請求する(つまり、源泉地主義に基づいた)「共同付加価値税制」を創設することです。過渡的な制度においては、個人については源泉地主義に基づいており、EUのどこで物品を取得し(て付加価値税を支払ってい)ようと、付加価値税を二度支払わされることがないようになっています。但し、この原則には特定の例外があります(例えば、「新規乗物」の取得や遠隔地取引)。納税義務者間の取引については、依然として、仕向地国主義に基づいています。

第六指令の規定と新指令のつながりが分かるよう、付加価値税指令の末尾には比較表がついています。

法令キーワード

  • 「第三地域(Drittgebiete)」:加盟国の一部であるが、付加価値税の目的においては、共同体の外部にあると扱われる地域。
  • 「新規乗物(Neufahrzeuge)」:
    • 排気量48cc以上または馬力7.2キロワット以上の陸上自動車で、最初の使用後6箇月以内に譲渡が行われた場合、または、走行距離が6000キロメートルを超えていない場合。
    • 全長7.5メートル以上の艦船(公海上において対価をとる旅客交通を行い、商業活動を営み、事業場の目的または漁業のために使用される艦船、海上における海難救助船・救援船、沿岸漁業船を除く。)で、最初の使用後3箇月以内に譲渡が行われた場合、または、航行時間が100時間を超えていない場合。
    • 積載時の総重量が1550キログラム以上の航空機(主として対価をとって国際交通業を営む航空会社により使用される航空機を除く。)で、最初の使用後3箇月以内に譲渡が行われた場合、または、航空時間が40時間を越えていない場合。
  • 「個別消費税の課税対象物品(verbrauchssteuerpflichtige Waren)」:エネルギー製品・アルコール・アルコール飲料・共同体の現行法に基づくタバコ製品(電気、ガス供給網により供給されるガスを除く。)
  • 「課税要件(Steuertatbestand)」:課税請求権の法律上の要件となる構成要件事実。

リファレンス

法令施行日 - 失効日加盟国における転換期限官報
欧州共同体指令2006年112号2007年1月1日2008年1月1日官報2006年12月11日L347号

改正法令施行日加盟国における転換期限官報
欧州共同体指令2006年138号2007年1月1日2008年1月1日官報2006年12月29日L384号

関連法令

施行法令

共同付加価値税制に関する欧州経済共同体指令1977年388号の施行細則を定める2005年10月17日の理事会規則欧州共同体2005年1777号(官報2005年10月29日L288号)

この規則は、共同付加価値税法の解釈と適用を明確にするものです。この規則においては、納税義務者・特定のサーヴィスに関する第六付加価値税指令の規定や、電子的に提供されたサーヴィスに適用される規定について、詳論しています。

内国に所在地をもたない納税義務者に対して付加価値税を還付する売上税手続に関する加盟国の法令を調和する1979年12月6日の理事会の第八指令欧州経済共同体1979年1072号(官報1979年12月27日L331号)

共同体領土に所在地をもたない納税義務者に対して付加価値税を還付する売上税手続に関する加盟国の法令を調和する1986年11月17日の理事会の第十三指令欧州経済共同体1986年560号(官報1986年11月21日L326号)

これらの指令は、納税義務者が取得の行われた加盟国に所在地を持たない場合について、その取得についての付加価値税還付の様式を定めるものです。付加価値税還付は、物品・サーヴィスが付加価値税還付権を発生させる活動に使用された限りにおいて、行われます。

第三国を発送地とする非商業的な小型送付における物品の輸入についての免税に関する2006年10月5日の理事会指令(改正を織り込んだもの)欧州共同体2006年79号(官報2006年10月17日L286号)

物の特定終局的輸入の免税に関して欧州経済共同体指令1977年388号14条1項d号の適用領域を定める1983年3月28日の理事会指令欧州経済共同体1983年181号(官報1983年4月23日L105号)

越境的旅行交通における輸入に際する売上税及び特別消費税の免除に関する法令及び行政規定を調和する1969年5月28日の理事会指令欧州経済共同体1969年169号(官報1969年6月4日L133号)

これらの指令は、さまざまな場合の物の輸入について付加価値税の免除を許可するものです。例えば、旅行手荷物で物が持ち込まれる場合、商業目的でなく輸入される場合、商業的性格のない小型送付として送付される場合が、これに該ります。すべての場合において、付加価値税の免除には、厳格な特定要件が課されています。

付加価値税分野における行政庁の協力及び欧州経済共同体規則1992年218号の廃止に関する2003年10月7日の理事会規則欧州共同体2003年1798号(官報2003年10月15日L264号)

付加価値税分野における行政庁の協力に関する理事会規則欧州共同体2003年1798年の特定の規定について施行細則を定める2004年10月29日の欧州委員会規則2004年欧州共同体1925号(官報2004年11月5日L331号)

上記理事会規則(上記施行規則により補足)は、付加価値税分野の租税詐欺を撲滅するために、加盟国租税行政間の協力を補うものです。この目的のため、依然として存在する情報交換上の障碍を取り除きます。その際、以下の3つの目的が追求されます:

  • 情報交換に関する明確で拘束力ある規定を定めること。
  • 各国の租税詐欺撲滅担当部局間の直接的な連絡を構築すること。
  • 情報交換を強化すること。

詳細情報については、欧州委員会の租税・関税同盟総局のウェブサイトを参照して下さい。

理事会決議

詳細情報については、欧州委員会の租税・関税同盟総局のウェブサイトを参照して下さい。

欧州委員会提出法案

サーヴィス提供地に関する指令を改正する2003年12月23日の修正版理事会指令案(欧州委員会2003年822号確定、官報2004年4月21日C96号)。2005年7月20日の理事会指令案により修正(欧州委員会2005年334号確定、官報2006年2月28日C49号)

欧州委員会は、2003年に、付加価値税納税義務者間で提供されるサーヴィス(企業間の「B2B」サーヴィス)について、サーヴィス提供者の本拠地ではなく、サーヴィス受領者の営業所所在地(すなわち、消費地)国において付加価値税を徴収する法案を提出しました。2005年修正後の同法案は、とりわけ、個人に提供される特定のサーヴィスの付加価値税規定に狙いを定めています。個人向けのサーヴィスの遠隔地取引においてもたらされている、欧州共同体内の企業間の競争の歪曲や、欧州共同体企業と第三国企業間の競争の歪曲は、この法改正により除去されることになります。また、同改正により、現在事業者・個人向けのサーヴィスに適用されている企業の付加価値税関連手続が簡素化されます(諮問手続:CNS/2003/0329)。

付加価値税納税義務の簡素化に関して規則を改正する2004年10月29日の理事会指令案、所在地が内国ではなく他の加盟国にある納税義務者に対する付加価値税還付の手続に関する2004年10月29日の理事会規則案(欧州委員会2004年728号1頁・2頁、官報2005年1月29日C24号)

欧州委員会は、付加価値税納税義務者が営業を行う加盟国に所在地を有していない場合の手続の容易化措置をより簡素なものするために、6つの措置を含む3つの改正法案を提出しています。すなわち、(1)該当する加盟国に所在地を有しない納税義務者のための単一窓口の導入、(2)単一電子窓口による還付手続の現代化、(3)加盟国が仕入税額控除権を制限し得る物・サーヴィスの分野の法令調和、(4)所在地国以外の国で納税義務者が行った特定の企業間売上の租税債務者の「リヴァース・チャージ」の拡大、(5)中小企業の特則の見直し、(6)遠隔地取引の規定の簡素化の6つです(諮問手続:CNS/2004/0261)。

単一窓口規定及び付加価値税還付手続に関する行政合意の導入に関して欧州共同体規則2003年1798号を改正する2004年10月29日の理事会規則案(欧州委員会2004年728号3頁、官報2005年1月29日C24号)

欧州委員会は、他の欧州共同体加盟国に向けて物やサーヴィスを提供する、越境的な事業活動を行う事業者を支援するため、付加価値税に関する減税の義務を簡素化する規則案を提出しました。この法案においては、とりわけ、「単一窓口(einzige Anlaufstelle)」の制度を導入することが規定されています。「単一窓口」を通じて、納税義務者は、全欧州共同体において行ったすべての売上について、付加価値税に関するすべての義務を、もっぱら所在地のある加盟国において果たすことができます。「単一窓口」制度により、納税義務者は、欧州共同体内のすべての物の譲渡・サーヴィスの提供について、単一の付加価値税番号を使用することができるとともに、付加価値税の届出についても、単一の電子ポータル上で提出することができるようになります。その場合、当該届出は、このポータルを通じて自動的に、物の譲渡やサーヴィスの提供が行われた各々の加盟国に宛てて伝送されます。さらに、この法案は他にも5つの簡素化措置を含んでいます(諮問手続:CNS/2004/0262)。

郵便事業におけるサーヴィスの付加価値税取扱に関して指令を改正する2003年5月5日の理事会指令案(欧州委員会2003年234号、官報2004年3月25日C76号)

欧州委員会は、郵便事業における公のサーヴィスの分野につき、増加しつつある民間企業提供サーヴィスの競争が歪曲されているのを除去するため、このサーヴィスに課せられる付加価値税の規定を、このサーヴィスを一般的な課税対象とするよう改正する法案を提出しました。この改正が最終消費者が支払う価格に与える影響を最小限にとどめるため、欧州委員会は、とりわけ、総重量2キログラム未満の信書・小包については、優遇税率を導入することを許容するつもりです。

この法案は、以下の3つのカギとなる要素に基づいています:

  • 公の郵便サーヴィス・切手に対する付加価値税免除を廃止すること。
  • 事実上すべての民間郵便についての付加価値税率を統一するために、サーヴィス提供の場所に関する規定を変更すること。
  • 優遇税率の適用を許容すること。

(諮問手続:CNS/2003/0091

旅行業者に関する特則について欧州経済共同体指令1977年388号を改正する2002年2月8日の理事会指令案(欧州委員会2002年64号確定、官報2002年5月28日C126E号)

この指令案は、旅行業者の特則の適用範囲を、パック旅行提供者の全領域に拡大するものです(諮問手続:CNS/2002/0041)。

欧州委員会の報告書・告示

理事会、欧州議会及び欧州経済社会委員会に対する2003年10月20日の欧州委員会告示「付加価値税戦略の優先事項の総括と更新」(欧州委員会2003年614号確定、官報未搭載)

理事会及び欧州議会に対する2000年6月7日の欧州委員会告示「域内市場における付加価値税制の機能改善の戦略」(欧州委員会2000年348号確定、官報未搭載)

詳細情報については、欧州委員会の租税・関税同盟総局のウェブサイトを参照して下さい。

原文最終更新:2007年2月16日
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