TACISプログラム

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1) 目的

東ヨーロッパ及び中央アジアのパートナー諸国における市場経済への移行の促進ならびに民主主義及び法治国家性の強化

2) 法令

東ヨーロッパ及び中央アジアにおけるパートナー諸国の支援に関する1999年12月29日の理事会規則2000年99号(欧州共同体、欧州原子力共同体) [官報2000年1月18日L12号]

3) 概要

共同体プログラムTACISは、ソヴィエト連邦の崩壊により成立したNIS諸国における民主化・法治国家性の強化・市場経済への移行を促進します。ここでいうNIS諸国とは、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、カザフスタン、キルギスタン、モルドヴァ、モンゴル、ウズベキスタン、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン及びウクライナを指します。

このプログラムは2000年から2006年にかけて施行され、欧州連合とこれらの諸国の間のパートナーシップ協力協定及び通商経済協力協定において決定された原則と目的を根拠とします。さらに、このプログラムは、共同体の基本的な民主主義条項に拘束されます。これらの規定により、理事会は、重要な点において協力が進展していない場合には、欧州委員会の提案に基き、加重多数決によって適当な措置をとることができます。

目的

このプログラムは、少数の重要なイニシアティヴに専念する(もっとも、射程の短い計画を排除するわけではない)ことにより、可能な限り大きな効果を得ようとするものです。この目的のため、大綱プログラムと行動プログラムについては、これをパートナーとともに決定することとし、最高で3つの領域横断的な協力領域を含めることとします。協力は、とくに以下の領域において行われます:

  • 制度改革、法制改革、行政改革における援助(法治国家的関係の創設、政治の有効性の強化、司法・内務領域における措置の援助等)
  • 民間領域の支援及び経済発展の援助(中小企業の発展、銀行・金融システムの発達、私企業の助成等)
  • 体制転換の社会的帰結を緩和する支援(医療改革、年金改革、社会扶助改革、社会保険改革、社会再建の支援、再就職等)
  • インフラストラクチャーの発達(交通網、テレコミュニケーション、パイプライン、国境のインフラストラクチャー等)
  • 環境保護の強化と自然資源の管理(共同体の法秩序に即した法平準化、自然資源の持続可能な管理等)
  • 農林業の発展(土地の私有財産化、販売と市場アクセスの改善)

3つの基本的な領域に加えて、核安全の領域において1つの支援を受けることができます。この支援は、次の3つの目的に専念します:

  • 核安全の問題への正常な対処を促進すること
  • 使用済みの核燃料棒及び核廃棄物の管理のための戦略を策定すること
  • この分野のしかるべき国際的なイニシアティヴに参加すること

このプログラムは、さまざまな必要性を考慮し、地域的な優先順位を考慮し、かつ、パートナー諸国において民主主義及び市場経済への道程において目指される前進とその受容能力を考慮しなければなりません。環境リスク及び環境汚染の低減、自然資源及びエネルギー資源の持続可能な利用、ならびに、体制転換の社会的側面には、特別な注意をしなければなりません。

そのほか、支援を受ける国同士の国家間協力、地域的協力及び越境的協力、支援を受ける国と欧州連合の間の協力、ならびに、支援を受ける国と中東欧諸国の間の協力が、このプログラムにより促進されることとなります。ここでいう越境的協力の目的は、第一次的には、

  • 国境地域が特有の発展問題を克服するのを支援すること
  • 国境の両側のネットワークの間の連結を促進すること
  • 関係諸国の体制転換のプロセスを、欧州連合及び中東欧諸国の国境地域との協力により、加速すること
  • 越境的な環境汚染及び越境的な環境リスクを低減させること

助成の対象となる措置

TACISは、本質的には、以下の措置を支援する技術的援助のプログラムです:

  • 知識、専門知識及びノウハウの供与(例えば職業教育措置のオーガニゼーションによる供与)
  • 産業的協力、官民のパートナーシップ(場合によっては欧州の専門家を派遣)
  • とりわけ越境的協力、中小企業助成、環境インフラ及びネットワークの領域における投資及び投資金融を支援する技術的援助
  • 技術的援助のために必要な備品の購入

財政

6年間で3兆1380億ユーロの融資が予定されています。予算当局は、毎年、欧州連合の財政見積りの上限の枠内において、毎年の金額を決定します。欧州連合の支援は、原則として補助金支給の形式で行います。

規則によれば、プログラムの総予算の20パーセントについては、共同体に利益のある乗数効果をもつ投資金融措置のために使用することができます(国境におけるインフラストラクチャーへの融資、環境インフラ、中小企業助成、ネットワークへの融資)。さらに、これらの共同体の融資金とともに、その他の投資がなくてはなりません。

さらにまた、質を確保するために金銭供与に競争の契機を導入するインセンティヴ・スキーム(新プログラムの総予算の20パーセント)が予定されています。このシステムは段階的に導入されることとなっています(最初は予算の10パーセントで、年間最大5パーセントを漸次的に引き上げていきます)。

そのほか、欧州委員会は、加盟国における官民組織との共同融資も促進します。

プログラムの策定

NIS諸国に対する共同体の援助は、パートナー諸国と欧州委員会の対話の過程で策定される国内的及び地域的な複数年プログラムの枠内で与えられます。これらの複数年プログラムは、3年から4年を包括する大綱プログラムを含みます。大綱プログラムは、協力の最重要の目標と大きなガイドラインを決定し、金銭供与の標準金額を含みます。

その後、これらの大綱プログラムに基いて、毎年又は二年に一度、行動プログラムを採択します。行動プログラムは、選択された協力領域において融資の対象となるプロジェクトの可能な限り正確なリストを含みます。最後に、これらのプロジェクトについて、欧州委員会と個々のパートナー諸国の間で融資覚書が締結されます。

行政手続

大綱プログラム及び行動プログラムは、欧州委員会が「NIS諸国及びモンゴルの援助のための委員会」(加盟国の代表者により構成され、欧州委員会の代表者一名が議長をつとめる)の意見に基き採択します。

欧州委員会は、欧州共同体予算規程に基き、責任ある財政・経済性・採算性の三原則を尊重しつつ、当該規則の枠内において融資の対象となる行動及び措置を管理します。

TACISにより融資された措置のために、欧州共同体予算規程の該当規程に基く入札手続の枠内で、約定が供与されます。役務に関しては、20万ユーロを超える約定は制限的国際入札手続により供与されます。20万ユーロ以下の約定については、交渉手続により供与されます。

入札手続及び業務委託には、加盟国、この規則の枠内で援助を受ける諸国及びPHARE受給諸国、及び場合によっては地中海圏の欧州共同体パートナー諸国の、すべての自然人及び法人が参加することができます。

このプログラムの実施の管理にあたっては、プロジェクト選択の局面においても、プロジェクト実行においても、欧州委員会と加盟国は緊密に協力しなければなりません。

進展と評価

欧州委員会は、毎年、実施した援助及びその効果の評価を付した、このプログラムの進展に関する報告書を提出します。この報告書は、これをすべての共同体機関に伝達します。これらの報告書を背景に、欧州委員会は、しかるべき規則改正案を提出します。さらに、欧州委員会は、約定の供与に関する統計を公開しなければなりません。

措置施行日加盟国における転換期限
規則(欧州共同体)2000年99号2000年1月21日 -

4) 施行措置

〔記載なし〕

5) その他の作業

〔記載なし〕

原文最終更新:2006年4月10日
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